題 たった一つの希望
住めなくなった地球
大気汚染と核戦争の末遺伝子異常を起こした生き物。
人間も例外じゃなかった。
遺伝子の異常をきたした人間の足や腕や目の数がおかしくなり、人類の選別が行われた。
遺伝子異常がある人間は地上に置き去りにし、異常がない人は地下へと隔離して、地下で子孫を残していた。
地上の汚染は深刻で、地上の物は食べられないのに地下では人口が増え続けた。そして慢性的な食料不足に陥っていた。
地上には遺伝子異常がありながら生きている人類がいたのに、遺伝子異常がない人々はそれらを人と見なさなかった。
人類は食料や資源確保の為に他の星に移住することを考えた。
約150年の長い歳月をかけて地下では遠くの星まで行けるロケットがようやく完成した。
悲願が達成されて祝福ムードに包まれた人類。
この頃には食料不足での戦争が頻繁にあちこちで起こり、略奪、強奪など、治安が悪化しまくっていた。
そんな中、選ばれた地下人類が住める惑星を探索する旅に飛び立つことになった。
地下の人々は、ロケットに希望を見出し、新たな安住の地を求めた。
希望を探索乗せたロケットは静かに飛び立った。
地下に住んでいたロケットの乗組員は久しぶりに地上に出た。
何百年も地上は死滅の灰の地と言われ、誰も出てはいけなかった。
地上に出たとたん、眩しい光がロケットの乗組員を襲う。
眼の前に広がった光景に、乗組員達は絶句した。
そこは核戦争の跡形もない美しい緑と水が溢れる惑星だった。
遺伝子異常を起こした人と生き物はいたものの、みな幸せそうな顔をして暮らしていた。
ロケットの乗組員は放射能の数値計スイッチを押す。
その数値は充分人類が住んでも問題がない数値まで落ちていたのだ。
乗組員たちは戸惑いの表情で顔を見合わせる。
希望の地として探していた場所は実は地上だったのではないか?
けれど、今地上に住むことは出来るのだろうかという疑念も沸く。
地上の住人は選別され、言わば捨てられたのだ。
地下の人間が地上に住むことで争いが起こるだろう。
乗組員達は再び顔を見合わせて頷く。
ロケットはそのまま計画通り安住の惑星を求めて飛び立つ。
地上の秘密を地下で打ち明けるのはまだ早い。
安住の地が他の惑星に見つからなかった時に考えても遅くない。
ロケットの乗組員達は皆複雑な表情で、遠ざかっていく緑の地球を眺めていた。
3/2/2024, 12:15:36 PM