どすこい

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「まって」

私には、双子の姉がいた。容姿端麗、頭脳明晰、文武両道。部活動の大会に出れば賞状を持って帰り、テストを受ければ満点のテスト用紙を持って帰ってくる。そんな、なんでもできる姉だった。歳は数分しか離れていないというのに、いつも背中を追いかけていたように思う。それでも時々こちらを振り返って手招きをしてくれる、優しい姉だった。そんな完璧な姉にも、私だけに見せる一面があった。親に隠れて夜更かしして2人で話していた時、塾を仮病で休んで遊びに行った時、2人だけの時に見せるイタズラっぽい笑顔が私は大好きだった。
私は今日学校を休んだ。それでも、制服に袖を通す。何故だか視界がぼやけてよく見えない。メガネはちゃんとかけてきたはずなのに。
扉を開けると、姉の顔が見えた。私の好きな笑顔とは似ても似つかない、青白い顔。手の届かない場所へと向かおうとするあなたに思わず、
「まって」
と声をかける。こんな時まで私を置いて先にいくなんて。

すぐに、追いつくからね、

5/18/2025, 2:01:46 PM