バカみたい
大して相手にされてないのに、一人で勝手に浮かれてバカみたい。ちょっと話せただけで、ラインを交換できたぐらいで、良い感じかも!なんて。
「誰にでもあんな感じだよ、普通に2人でご飯行くし、ラインも交換してる」彼から直接聞いたわけではないけれど、友達がそんな噂があることを教えてくれた。私はつい最近好きになった彼のことより、友達の方を信じた。
金曜日の夜、初めて彼の方からラインがきた。"明日2人で映画見に行かない?" という内容だった。私は喜んで"行きたい!!!"と返事をした。明日の計画を2人で立て、ラインが終わった時、噂のことを思い出した。素直に喜んでバカみたい。そうだ、誰とでもご飯に行くのだから、デートではなく、ただの遊びだ、だったら服装も適当でいいかな。
適当でなんて思っていたのに、髪を巻いたり結んだりを繰り返して時間をかけて、アクセサリーはどうしようと、イヤリングを耳につけたり外したりで、アクセサリーケースの中をぐちゃぐちゃにしてしまった。
彼よりも早く映画館の前に着いた私は、前髪をいじっていた。勝手なイメージだが男子が好きそうな、膝上の白いスカートにギンガムチェックの袖がふわふわしたデザインのシャツにした。髪は普段巻いたりしないため、慣れていなくて無難にポニーテールにしておいた。緊張で手汗が出てき始めたとき、前の方から彼が近づいてきた。
「ごめん、待たせたね」
「えっ!いや、えっと、そんなに待ってないよ」
制服姿で見慣れている彼の私服姿がかっこよすぎて、うまく呂律が回らなかった。
好きな人と一緒に恋愛映画を見ることに憧れていた私は、映画にも横の彼の存在にもドキドキしながらで画面に集中するのが大変だった。映画を見終わったあとはどこかでお茶するのかな、なんて考えていたのに、映画館を出ると彼はこう言った。
「じゃあ、今日はありがとう。帰ろっか」
私はあまりにも何もないことに気になってしまい、思わず聞いてしまった。
「ねえ、あの噂ほんと?このあと、誰かと会う約束してるから映画だけで終わりなの?」
「噂、ってなに?」
彼は眉間に皺を寄せている。気分を害してしまったと思い、慌てて続ける。
「な、なんでもないの!ごめん、変なこと言って、じゃあね」
もう顔を見れなくて、下を向いて帰ろうとすると、
「待ってよ」
と腕を掴まれた。
「噂のこと教えて」
本当に何も知らなそうだった。彼の、私の顔を覗き込む仕草に魅了されて、つい頷いた。私たちは映画館の隅にある、飲食できる休憩スペースで横並びに座った。
「友達から聞いたんだけど、〇〇君、誰とでも遊びに行ったり、ラインとか交換したりするって」
「その噂信じたの?」
「うん、ごめん信じちゃった」
「そっか。俺みんなに遊び人に見られてたんだな、ちょっとショック」
と、彼は笑った。
「でも私見たことあるの、何回か女子にライン聞かれてるとこ」
「聞かれてるところでしょ?交換はしてないよ、いつも好きな子いるからって言って断ってた」
「えっ、じゃあなんで私と交換したの?」
彼は頭をかきながら、
「だからそういうことだって」
私は彼がさっき言っていたことを思い出して、一気に顔が熱くなった。彼も少し顔が赤くなっている。彼は私の方を向いて、まっすぐ私の目を見つめ、
「好き」
と、言った。
「私も。、、、付き合ってください!!」
「ぶはっ、俺の台詞なのに」
と、彼は吹き出して笑った。
あんな噂、嘘だったのに信じちゃってバカみたい。色々考えてバカみたい。でも、あなたが解決してくれるならバカでもいいかな。
3/23/2024, 6:07:23 AM