黒佐

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人間として暮らすというのは些か窮屈だ。
他人と話すのにも、自分の動作一つ一つにも、全てに気を遣わなくてはならない。
そもそも起き上がるところから既に面倒で仕方がない。

そんな時には少し腰を下ろして休んでみる。
只管に内省的になってみて、ネガティブになって、自分の持っている厭世感や嫌な部分をちょっとだけ受け入れてやる。
すると少しだけ、肺が軽くなって、溜め息と一緒にどろっとした何かが出ていく。
溜め息は幸せを逃がすかもしれないけれど、それと同時にたまった何かを押し出してくれる。幸せが気持ちよく戻ってこれるように、隙間を作ってくれる。

幸せの形は人それぞれ、私は自分の暗い部分に身をまかせるこの時間を気に入っている。






物品の話もしてみようか。

私に物品のお気に入りはない。
いや、あったのかもしれない。
自室を見渡すと物が散らばっている。
そのどれもが、なくても生きていけるもの。
大切であろう物の存在は認識できても、もう一人の私がぼそりと告げる。
「それは貴方が生きていく上で本当に必要なものでしょうか?」
と。
全て捨てること、逆に全て残しておくことも、どちらも正しいとは言えない。
お陰様で一般的に考えて大切にとっておくべきなのか、そうでないのか、てんでわからないのだ。

気取らずに言うなら、私のお気に入りはその辺のスーパーマーケットに併設された服屋で買った、テキトーなパーカーだ。
でもこれを素直にお気に入りと認めてしまうと、年中これを着てしまうだろう。
俗に言う、ダサいってやつだ。
やむを得ず、そっと引き出しにしまうのである。

「お気に入り」

2/18/2024, 4:57:29 AM