SF
300字小説
未来からの少年
「……おいっ!」
見知らぬ少年が僕の腕をぐいと掴んで引っ張っていく。
「……たく、時空震が起きて時空線がズレた途端、消えそうになったんだぞ! 『また巡り会えたら』なんて呑気なこと考えられてたら、こっちが困る! とっとと連絡先を交換して来い!」
少年が引越しトラックの影に向かって僕を突き飛ばす。
「勉くん? お別れに来てくれたの?」
寂しそうに立っていた幼馴染の顔がぱっと輝いた。
「……あのとき、連絡先を交換してなかったら……」
あの少年のおかげで僕と彼女の縁は切れることなく続き、結婚することが出来た。
息子を抱き上げる。
「……いったい、あの少年は……。痛い! どうして、お前は、この話をするとお父さんを蹴るんだ……」
お題「巡り会えたら」
10/3/2023, 12:20:54 PM