紫雨

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 「あ、雨…」
 と、落ちてきた滴を拾い集める。今日の気温は18℃。寒いこの地域のこの季節にはまだ、少し暑くい。集めた水滴はすぐに私の温度に溶けてしまう…。でも、なんだか手が冷たい。雨の冷たさが私にツとしみこんでくる…。
 「寒いな…」
 訳もないのに、声に出してみる。誰も答えてはくれないけど、なんとなく…ね。

 “あー!虹だー”
 明るい声が周囲に響く。道行く人が思わず微笑んでいる。
 “トトト…”
 幼稚園くらいの女の子が黄色いかっぱを揺らして走って行く。そして、精一杯手を伸ばした。
 「もう、そんなに手を伸ばしたって届かないよ」
 女の子のお母さんが優しく女の子に声をかけた。すると、女の子は、ぷう、とかわいらしくまん丸くほおを膨らまして、
 「えー!お母さんの嘘つき!届くよ!なのかがもっと大きくなったら絶対届くもん!今は無理だけど、だからなのかはやく大きくなるもん!」
 といった。
 「え~、そうなの?そしたら、なの、その虹、お母さんにも分けてくれる? 」
 と、女の子のお母さんはいたずらっぽく笑っている。 
 「うん!!!なのか、お母さんだけじゃなく皆にあげるの!だって皆が幸せなのがいいもん!」
 「そっか、ありがとう」
と、女の子をなでながら二人歩いて行く。

 「ふふ…」
 さて、私も行こうかなー。


 
 
  
 

3/25/2023, 7:38:50 AM