時計の針が重なって、次にもう一度重なるまでの時間。それが俺の余命だ。
針に電流が流れ起爆する。あまりにアナログな仕組みに呆れて乾いた笑いが出る。
悔やみ、苦しみながら最期を迎えろ。明確なメッセージが込められている。それはそうだろうな。故意ではなくとも、彼の子供を奪ったのは俺だ。車と酒のせいではない。
なのに、裁判は車と酒のせいで懲役五年だと。
納得出来るはずがないだろう。
これは私刑だ。正義の私刑だ。だから俺は受け入れる。
12時まで後わずか。秒針が近づく。カッチカッチと十三段階段を登るような音が響く。
さすがに強く目を閉じた。念仏も唱えた。唱える声が悲鳴になり響きわたるなか、時計は12時を過ぎた。重なりが離れて行く。呆然と見つめながら。はっと笑った。騙されたのだ。恐怖の天罰を与えられたのだ。
がくりと首を垂れしばらく動けなかった。
いつの間にか西陽がさす時刻になっていた。ロープは緩み解けた。俺は立ち上がり出口に向かう。
時計は大きく背中に西陽を受け、長い影を伸ばしている。そのものが日時計のようだ。
出口のドアに手をかけた俺の背にその影が重なった。生が消える刹那、時計の爆発音が聞こえた。
9/24/2025, 2:34:39 PM