楠征樹

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《安らかな瞳》#19 2026/03/15
※『ぼっち・ざ・ろっく!』二次創作

「どうした、喜多」
「ううん、何でもないの」
「そう?おどおどした目のアイツの事考えてたんじゃないの」
 そんなんじゃないったら、したり顔のさっつーにアカンベーってしながら、そう誤魔化した。
 私、そんなに顔に出やすかったかしら。

 実際のところ、ひとりちゃんの瞳は。
 泳いでいるか、眠そうにしてるか、何かをやらかしたかのように淀んでいるか、学校だとそんな感じ。
 一緒にバンドを始めてギターを教えて貰うようになってから暫く経つけど、滅多に目が合わないし、たまに目を合わせると眩しそうに逸らされる。
 でも、時に真剣で、力強くて、私の心臓をギュッと掴む。
 
 高一の秋、文化祭二日目、体育館ステージ袖。
 リョウ先輩にお願いして、伊地知先輩にも付き合って貰って、いつも以上に練習して、リハーサルも完璧だった。
 それでも私は、緊張していた。満員に思える体育館のフロアを見て、あのファーストライブの時とは違う身体の震えが私を襲う。
 深呼吸して、発声練習して、誰かがかけてくれている声もどこか遠くて、心が闇に囚われたような、そんな感覚。
 そんな時、暗闇の中、青い星が放つ眩しい輝きが目に飛び込んで来た。
 ひとりちゃんの、あの澄んだ青空のような瞳。
 どこか遠くを見つめている、その瞳を見つめているうちに、私の身体の震えは収まって、気持ちが穏やかになっていく。
「あ、あの、喜多さん、どうかしましたか?」
「ううん、何でもないの」
 そう、何でもない。
 でも、気が付けた事が一つ。
 私、あなたのその瞳が、大好きなんだ。
 

3/15/2026, 1:02:28 AM