【セーター】
ぎゅうぎゅう詰めの通勤列車を降りた駅で、赤いセーターを見かけた。黒い背広姿ばかりの中ではやけに目立つそれに一瞬、君がいるのかと錯覚する。
(……バカみたいだ)
君がいなくなってもう四年に差し掛かるというのに、いまだに僕は君のことを探しているんだ。その事実に気がついてしまって、胸が痛くなった。
どっちが似合うと思うなんて洋服屋で君が持ってくるのは、いつも派手な色の服ばかりで。どっちも似合うよと返せば頬を膨らませられたものだった。そういう毎日が、どうしようもなく好きだった。
首に巻いた赤いマフラーに顔を埋める。君と共に過ごした最後の誕生日に贈られた、編み込みのマフラーだ。
『お揃いだね』
お気に入りの真っ赤なマフラーで笑った君の声を思い出して、目の奥がじんわりと熱くなった。
11/24/2023, 10:33:44 PM