まにこ

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色々と言いたいことはたくさんあった。
しかしそれは唇から外を出て空気に触れ、言の葉の形を成すまでに全て泡となって消えていく。
嗚呼、己の口下手がこういう時に嫌になる。
どろどろとした言葉になり得なかったものたち、成仏できなかった醜い感情たち。
これらをまるで禊みたいに全て綺麗に流してくれるのが雨だった。
ある日たまたま傘を忘れてしまい、仕方なく雨の中ひた走って帰ったことがあるのだが、あれはとんでもなく心地の良い経験であった。
何一つ忖度することなく、全身を満遍なく柔らかくそれでいて叩きつけるように雨水がじわりと身体を包み込む。
雨も涙も全ては泥濘へと吸い込まれていった。
ずっとこの中で佇んでいたかったと今でも思う。
何故私たちは雨を何となく忌み嫌う習性があるのだろう。
傘なんて無くったって雨と共に生きることもできるのに、少なくとも私はそう思う。

8/27/2024, 11:11:21 PM