ミミッキュ

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"眠れないほど"

「ほーれ、ほれ〜」
「みゃう!うぅ〜……」
 お尻を突き上げ、跳躍の準備体制になる。
 寝間着に着替え日記を書き終えた後、猫じゃらしに飛びつく子猫の様に楽しくなりながら、持っている猫じゃらしを動かし続ける。
 殆どを居室に閉じ込めてしまっていて、医院だししょうがないと思いつつ、そのせいで体が鈍るんじゃないかと心配になってこの前から新たなルーティンとして、ベッドに入る前に猫じゃらしで遊んでやっている。
「みゃう!」
 一気に飛びかかって、猫じゃらしに前足で触れそうになる。
 が、既の所〖すんでのところ〗で猫じゃらしを動かして、子猫の狩猟本能を更に引き出す。
「ふふ、ここまで届くか〜?」
 先程よりも高い位置に猫じゃらしを持ち上げ、挑発するように手首のスナップを利かし猫じゃらしの先を揺らす。
 我ながら意地悪だ。
 子猫の為にと始めた事だが、途中から俺が子猫以上に楽しんでしまっている。
「うぅ〜……みゃあっ!」
「うおっ」
 再びお尻を突き上げて跳躍の準備をし、飛びかかってくる。慌てて猫じゃらしを逸らす。
──危ねぇ……今の、あと数mmってとこか……?
 以前までもだいぶ凄かったが、ここ毎日脚力が着実に増してきているのを実感する。
「……やべっ、早く寝ねぇと」
 ふと時計を見ると、もうすぐ日付が変わる時刻を示していた。
 慌てて猫じゃらしを仕舞い、明かりを消してベッドに潜る。
「みゃあ……」
 ベッドに乗り上がり、『まだ遊び足りない』と言うような声色で鳴いてきた。
「ごめんな……、もう寝なきゃいけねぇ時間だから、また明日な……」
 子猫の頭を優しく撫でる。ゴロゴロと喉を鳴らし、手に擦り寄ってくる。
──時間を忘れる程にやるなんて、本当にこいつ以上に楽しんでるじゃねぇか……。
 自分に呆れながら、ゆっくり瞼を閉じる。
「……眠れねぇ…」
 目が冴えてしまい、しばらくベッドの中をもぞもぞ動いていた。

12/5/2023, 1:31:34 PM