かたいなか

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前回投稿分からの続き物。
二足歩行で赤いスカーフ巻いた狐が経営してるレストランがありまして、
その日は美味を愛する可愛らしい女性の管理局員と、その同志の稲荷子狐が、
とても幸福に、とても大量に、赤いスカーフ狐たちが作る料理を、堪能しておりました。

当然厨房は大騒動の祭り状態でして。

「おまえらぁー!気張るコン!!」
厨房は、今日が休みだったハズのバイト狐も、
昨日で辞めるハズだったシェフ狐も、
勿論店長も出張ってきて、オールスター大奮闘。
「明日と、明後日の食材も、こっちに回せコン!」
レストランの裏口では店長が、自分から鍋を振り、調理スタッフを鼓舞します。
「コレ乗り切ったら、明後日まで皆で宴会だコン、俺が料理を振る舞うコン!こやぁぁぁ!!」

うおぉぉぉぉ!!

大量にオーダーが為された注文を、赤いスカーフ狐の20匹が、ジャンジャン、じゃかじゃか!
お鍋を振って、蒸し器を増設して、低温油と高温油を行ったり来たり、云々。
料理完成のボタンが押されると、
電気信号がピッ!ディスプレイの信号がピピッ!

料理完成をホールスタッフのフォックスに、
信号でもって、伝えるのでした。

「お待たせしました!」
ホールフォックスはワゴンをガラガラ。
できた料理を片っ端から運んで運んで、
そしてまた、料理完成の報告信号を、尻尾ぶんぶん振り倒しつつ、待つのでした。

これがお題「信号」の、ひとつのおはなし。
そして、このおはなしの間に、
もうひとつ、「信号」のおはなしが。

管理局員と稲荷子狐が料理を堪能している奥で、
ひとり、別の男性局員が、クルミ味噌ダレのざるそばを食っておったのでした。

「相変わらず、よく食うなぁ」
丁度、くるみが旬を迎え始める時期でした。
よくクラッシュして練り込まれたクルミの味噌ダレに、彼はひと振り、ふた振り。
少しだけ、一味を入れました。
「うん。 美味い」

クルミの油脂的な甘さを内包した味噌ダレに、一味唐辛子の文字通りスパイスが、ピリッ!
アクセントの信号として、伝わります。
このスパイス信号とともに、男性局員は十割そばを、スッ、と含み、咀嚼します。
「やはり大盛りを注文すべきだったか?」

おやおや。彼が食べてる味噌ダレのざるそばを、
前述の稲荷子狐が、ロックオンしたようです。
女性職員の袖を引っ張って、味噌ダレを指差し、
そして、ホールスタッフォックスが呼ばれます。
どうやら新規で注文したようです。

「あいつ、唐辛子、大丈夫だったかな」
まぁ、俺の関与するところじゃない。
男性職員はオーダーを、見なかったことにします。
多分、大丈夫なのです。
「ごちそうさま。会計を頼む」

同部署別部門のお土産に、殻付きクルミを1袋購入して、男性局員は帰ります。
それがお題「信号」の、もうひとつのおはなし。
もうひとつの料理物語でしたとさ。
おしまい、おしまい。

9/6/2025, 7:16:01 AM