黒山 治郎

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瓶詰めの脳は夢を見る
平凡な日常を夢に見る

普通とは一体なんだろうか…
瓶の外では冷ややかな視線が充満しているのに
八百万のカミサマ達はカルテを粛々と埋める
バイタルサイン、感情の起伏、夢の内容
個人個人の幸福や不幸の振り幅
脳髄液と保存液の複合度とそれらの循環値
瓶外部の劣化、損傷の具合

外部から操作された日々にも気が付かず
夢を見るもの達の感情は色鮮やかだ
長い時間の中で当たり前になった喜怒哀楽
定着しきった記憶と感情、幻肢に与えられる触感
人間としての形を誇り過ごす今日という日
気付かずとも相容れない者の色は僅かに薄いが
脳へ直接的に流される刺激に感覚は嫌でも尖る

己の視覚を疑う事もなく、それこそ夢にも思わず
人々は思う様に表情を描き口々に親しい者らへ
今日を終える区切りの度に、こう告げていた

“また明日”
                  ー また明日 ー

5/23/2024, 3:29:42 AM