くろねこ

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それはとある夏の日

君と僕が出会った運命の日

入道雲の下で友達と笑いながらアイスを食べる君に

僕は一目惚れしました。

どうしようもない恋心でした。

名前も学校も学年もなにもかも知らないのに

いつの間にか目で追っていました

すれ違えばシトラスのいい香りが

顔をくすぐる長いポニーテールの髪が

愛おしいほどに好きでした

君がこちらを振り向くたび

僕のことじゃないなんて分かってはいたけれど

向けられる視線が

全て僕のものと勘違いしそうでした

その真っ白い肌と華奢な体は

いつか泡となって消えてしまいそうでした

言葉には表現できないほどだった

つい、手を握ってしまいそうだった

頭がおかしくなりそうだった

それくらい君を愛していた

だから言われるまで気づかなかった

無意識だった

包丁を手にして君のもとへと向かっていた

君から出る真っ赤な血の滝すらも美しかった

綺麗な目から涙がこぼれ落ちる様子も愛おしかった

絶望に満ちている表情すらも好きでたまらなかった

全部僕の手によって生み出せたものだなんて

死ぬほど嬉しかった

僕の手で君を殺してやりたかった

永遠に僕のものにしたかったんだ

ああ、もう満足だ

パトカーのなる音と周囲のざわめきの声

それすらも聞こえなくなるような

人生で一番心地よい体験

後悔も、罪悪感も、微塵も感じていなかった

嬉しさで胸が張り裂けそうだった

骨が折れるくらいに君を抱きしめながら問う

「君は、僕のことを愛していたよね?」









6/10/2025, 10:49:34 AM