0302

Open App

「いいんだ、それで」
 君はひどく軽い笑顔を浮かべた。それはきっと、真夏の青空に似ている。清々しくて、雲ひとつなくて、まっさらで、──その明るさに焼かれてしまう人間たちのことなんて、微塵も考えていない。
「俺の行動が誰かのためになるならさ。それだけで、報われた気持ちになる。実利がなぁんにもなくったって」
「──なるほど。……なるほど、ね。君は、そういうやつだったか」
「うん」
「我らが生徒会長様は、反吐が出るような愚か者ってわけだ」
 心底軽蔑した瞳でそう告げてやっても、君は優しい笑みを崩さなかった。それが気に食わなかった。──誰かのために、なんて、まったく。
 まったくもって、バカバカしい。
「愚か者でも世界は変えられるよ」
「改善になるかはわからないけど」
「そうだね。そうしたら、まあ……また出てくるでしょ。俺みたいのが」
 そう告げて、本当に、君は最後まで憎らしくて/愛おしくて/どうして君が/いかないで、

「ばいばい」

 ──肉塊の潰れる音は、静かな世界でやけに響いた。
 きっとそれが、彼らの革命の狼煙なのだった。

7/26/2023, 3:52:22 PM