「一目惚れからじゃない」
「いい加減に顔で好きになるのやめたら?」
恋愛小説ならエモいラブコメ展開があってもおかしくない、男女の幼馴染という関係。
だが、私たちにはそういうことは起こらない。
「そうは言ってもなー、やっぱ女は顔だと思うんだよ」
「サイテー」
「そういうお前だって、イケメンは好きだろ」
「まあ、観賞用としては、ね。でも彼氏にしようとは思わない」
「へーえ」
「私は、あんたと違って中身重視なの!」
「中身なんて、見ただけじゃわかんねーだろ」
「だから、会話して、何度もデートして、知っていくんじゃん」
「そういうもんなのか」
「そうだよ」
彼はとても惚れっぽい。
それだけではない。
彼の恋は長く続かないのだ。
いつも彼の一目惚れから始まって、猛アタックして付き合う。
そして、二週間経たないうちに別れる。
原因は、毎回同じ。
性格や価値観の不一致。
「その言い方だと、何度もデートしてるのか、お前」
「……まぁ、誘われれば。生理的に無理な相手以外なら」
「マジかよ」
「なに、そんなに意外?」
「あーいや、その……俺以外にもお前のこと、可愛いって思うヤツいるんだと思って……」
「バカにしてんの?」
どうせ私は、あんたの元カレたちに比べたら地味で可愛くないよ!
「いや、だからその、他にもお前のこと好きなヤツがいるんだと思うと、ちょっと焦ったというか、嫌な気分になったつーか……」
見たこともない表情を浮かべる幼馴染。
私は彼と距離を取ろうと一歩下がった。
「な、なに言ってんの……」
なぜ、私の胸は高鳴っているんだろう。
こんなヤツ……違うのに。
私の好みではないのに。
「一目惚れからじゃない『お付き合い』してくれねーか?」
────始まりはいつも
10/20/2024, 8:40:37 PM