一尾(いっぽ)

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→短編・日記

『8月4日。
つまらぬことでも、
稀に発酵し、大事を起こすことあり。
初手が肝心要。』

 亡くなった祖母の遺品整理をしていたら、表紙に何もかいていないノートが出てきた。何だろうと開いてみたら、日記だった。
 私が手に持つこれは、彼女の何冊目の日記なのだろう? 偶然にも今日の日付から始まっている。
 妙に乱れた文字で書かれた短文に目が釘付けになる。何度も赤線で囲まれた『発酵』という単語の違和感。
 つまらぬことが料理なのか、人間関係なのか、それとももっと何か別のことなのか……。
 祖母の日記は、それ以上のことを語ってはくれなかった。

テーマ; つまらないことでも

8/4/2024, 2:04:15 PM