時雨 天

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澄んだ瞳




「とっても綺麗な瞳。まるで、青く澄んだ空みたいな色」

そう言われた言葉。俺の両頬を優しく両手で包み込み、しっかりと俺の瞳を見て微笑む。
世界がキラキラと輝いて、眩しい。心の奥底から嬉しさが込み上げてきた。
瞳を褒められたことはあまりなかったと思う。どちらかと言うと姿の方が多い。
身長が高い、顔が良い。幾度も聞いてきた言葉。しっかりと見てくれる人なんていなかった。

「お前の瞳も澄んでいると思う」

お返しに両頬包んで、しっかりと見つめる。
星空のようにキラキラと輝いた瞳。どの世界でも美しく映るのだろう、きっと。

「えっ、そうかな?」

「ん、とても綺麗綺麗」

「わぁー、それは嬉しいなぁ」

えへへと照れる姿は、かわいいと思った。
柔らかい頬、ずっと触れていたくなる。透き通り、きめ細やかな肌。

「そろそろ、頬を離してほしいなぁ」

「俺も同じく思っている、いい加減離してほしい」

「えっ、離さないとダメ?離すとその青い瞳がよく見れないじゃん」

「いや、別に普通に見れるだろ」

「至近距離が一番拝める」

するりと頬から手が離れ、目の前で合掌のポーズをされた。
相変わらず、変わっていて面白い。思わず、笑ってしまった。
俺の笑っている姿をみて、向こうも笑う。

「あっ、笑うともっといい‼︎いつも怖い顔じゃなくて、笑えばいいと思う。そして、その瞳を広めていこう」

「やだ、別に広めなくていい」

「えっ、なんで、もったいない。推していこう、その瞳」

「やだよ」

なんでなんで攻撃が出てきたので、無視して、横を通り過ぎる。
置いていかれるのは嫌みたいで、後ろをちょこちょこついてきた。
俺は一人、クスリと笑う。この行動がかわいいから。



 「俺だけが知っているモノをこの瞳に映せれば、それでいい」

7/30/2023, 1:54:48 PM