お祭り
「あ、怜…ごめん、夏祭り…今年は彼女が一緒に行こうって言ってて…。」
「…あぁ。うん。わかった。」
そんなの、わざわざ言われなくたって、彼女が出来たって聞かれた時点で分かってたのに。
怜は晶の妙な誠実さに腹を立てて、目を伏せて彼の部屋を出た。
家が隣同士だし、誰より近いから大丈夫。晶が小学校を卒業した時、怜はそう思っていた。だけど現実は時間的距離が晶を遠ざけ、彼は怜が知りもしない中学校の女の子に告白されて付き合い始めた。
久しぶりに晶の部屋に泊まって布団の中で打ち明けられた夜、怜は冷水を浴びせられたような感覚を初めて味わったのだった。息の仕方も分からなくなりそうで居ても立っても居られなくなって、お腹かが痛いから帰るとベッドを出て自分の部屋に帰った夜。
結局晶のことがどうしても頭を離れず、寝付けないままカーテンの外が明るくなった。初めて見るに等しい朝焼けをぼんやりと眺めながら、怜は嫉妬を自覚した。そして、自分の欲望が恋なのだろうと理解した。
やけに喉が渇いて、一人きり、静かなキッチンでコップに水を満たした。キッチンの小窓から差し込む限られた光の中、怜は口に出来そうもない恋心を飲み下すように冷たい水を飲んだ。
7/29/2023, 8:55:02 AM