カランカラン
喫茶店のドアについた、来客を告げるベルが鳴る。
私は顔を上げて入ってきた人の姿を目に映す。
中肉中背のサラリーマンの男の人だった。彼は店員に案内されて、カウンター席に座った。
私は2人用のテーブル席に座りながら、5歳年下の中学生の妹を待っていた。今日は日曜日だが、この近くで模試があって、妹はそれを受けにいっている。『プチお疲れさま会』として、この喫茶店でお昼ご飯とスイーツをおごってあげる約束をしていた。
スマホで時間を確認する。時刻は13時半をすぎたところ。ちょうど模試は終わった頃だろう。
カランカラン
入り口のベルが鳴る。反射的にドアの方を見る。
入ってきたのは妹ではなかった。
私はスマホに視線を戻した。
どうも、落ち着かない。もし、あの子が落ち込んで入ってきたらどうしよう。高校受験に関わる大事な模試だ。いつも通りのあの子なら大丈夫だとは思うけれど、ついつい心配になってしまう。早くあの子の顔を見たくて、カランカランと音がするたびに、ドアの方を見てしまうのは、どうしようもなかった。
カランカラン
入り口のベルの音。ドアの方を見る。今度も違った。
そんなことをあと2回繰り返したのち。
カランカラン
ベルの音にドアの方を見ると、入ってきたのは妹だった。制服姿の妹は私を探して店内をキョロキョロと見ている。特別落ち込んだ様子は見られない。少し安堵して、私が腕を振ってやると、妹は私に気づいて、こちらへ早足にやってきた。
「お疲れさま。どうだった?」
私が訊くと、妹は右手にVサインを作って、
「過去一出来た!勉強の成果ちゃんと出し切れた感じ!手応えアリアリ!」
と満面の笑みで告げた。
「やるじゃん!ほんとお疲れ!さ、好きなもの食べな!」
メニューを妹へ渡しながら、安堵と喜びで、私の顔も自然と綻んでいた。
12/21/2024, 8:36:17 AM