(※二次創作)(列車に乗って)
ガタンゴトンと定期的な音と振動が繰り返され、僕の身体を心地よく揺らす。窓の外は田畑や山、木々の間に変わり随分と時間が経っている。列車に乗って、はるか遠くの小さな村に、僕は向かっていた。
思えばこんな遠くまで列車に揺られていたのは初めてかもしれない。
(リュックの中、もう一度確認しておこう)
僕は隣の座席にリュックを下ろすと、早速中身を見る。まず荷物の大部分を占めているのが寝袋。少ない貯金をはたいて買った、質のいい寝袋で、床でも草むらでもどこでも快適な寝心地を提供してくれるらしい。あとは、ちょっとした身の回り品と、衣料品がいくつか。ん?この底でぐちゃぐちゃに丸まってるのは……替えのシャツじゃん。アイロンとかあるかな、あの村。
僕が今から向かうのは、山あいの小さな村だ。若い人が外に出て、すこし寂しくなってきた、そんな地に、誰も住んでいない古民家があった。土地込みでかなり格安で売られていたそれを買ったから、僕は貯金がゼロになった。僕はその村で、その家で、念願だった田舎暮らしを始めるのだ。
ガタン、ゴトン、変わらないリズムは心地よく僕の身体を揺らす。
古民家を売ってくれた地主さんとは、電話で話したきりで、今日が初対面となる。他の村人さんたちとは、当然何の接点もない。でもなんでだろう、きっと大丈夫な気がするんだ。それに僕、力仕事には自信があるし、細々したことを自分の手でやることも苦にならないタイプだ。
(というよりは、自給自足に憧れて、この移住を決めたんだし)
そろそろ到着する時刻だろうか。僕は、替えのシャツやら小物やらをリュックに詰めると、最後に寝袋を畳んで詰め込んだ。ん、ファスナーがなんだか閉まらな……わわ!電車が失速してる!!
僕は立ち上がった。少しぐらい閉まらなくても、こぼれたりはしないさ。慌ただしく、僕の新生活が幕を開けようとしていた。
3/2/2024, 7:17:00 AM