しなしなになったさくらんぼを口に運ぶ。きつめに効かせたラム酒の風味がつんと鼻にきた。
歯が種に当たった。
種を舌先で探りだし、紙皿に吐き出す。吐き出した種に、仄かにピンク色の果肉がこびりついていた。
もったいない。紙皿の種を見やり、侘しくもそう思った。
外に設置してあるバーベキューコンロからは、焼けた肉や野菜の匂いが漂ってくる。立ち上る煙は遠くにいても目に染みた。
それを囲む数人の男女。片手にアルコール類を持ったまま、背中や腰に触れ合いながら、気軽に笑い合っている。
蚊帳の外の私は、みんなが何で笑っているのかも分からない。
空気を読んで一人用のベンチに座り、パイナップルやいちごやメロンが入ったフルーツポンチを黙々と食べるのが精一杯だ。
誰かが大量に買い込んでいたフルーツをカットし、シロップを作って、冷蔵庫の中に冷やしておいたのはわたしだった。
フルーツポンチの方も食後のデザートを想定していたようで、まさかこんなにお早い出番になるとは思いもよらなかったらしい。きんきんに冷えているとは言い難かった。
しかし何かをつまんでいなければ場が持たない。かといって、あの群れの中に分け入って肉や野菜を貰いに行く勇気も持っていない。
そこでフルーツポンチをずいぶんと早くお呼びしたわけだが、じゅうじゅうと肉が焼ける音や匂いに紛れて、一人食後のデザートをつまむわたしは、このデザートの作成者にもかかわらず義務感で食べている感じがした。
少々お酒がきつすぎたかな、と心配になった。
だがあの様子じゃメンバーの中に下戸はいなさそうだ。料理を好みの味に仕上げられるのは作った人の特権だけど、口にあわないからとひんしゅくを買うのも怖い。
メロンの玉を口に運ぶと、また洋酒の匂いが鼻から抜ける。
これから夏本番なのに、侘しい秋風のように吹き抜ける匂いだ。
7/1/2025, 1:34:56 PM