衣替えをするみたいに、自分の記憶も季節ごとに入れ替えて、欲しい物だけ取り出せれば良いのに。
「そしたら、もっと楽な気がする」
私には5年付き合った恋人がいた。
けれど、彼が一言、『別れよう』と言ってきた。私は、何で?と質問したら『ごめん』と一言、それだけ……。
私にとっては嫌で悲しい記憶になった。
「どうせ別れるなら、私のあんたとの記憶も一緒にもっていってよ!」
いらない、私の記憶。
封印したい、私の記憶。
ピーンポーン。
「……!!だれ?」
私は立ち上がり、インターフォンの画面の見ると、小雪と文世(あやせ)が来ていた。
「はーい。」
「いきなり来てごめ~ん。一緒に晩御飯食べない?美味しいもの買ってきたよ!」
「ピザにお寿司に、チキン。開けてくれー」
「はーい。ちょっと待ってて!!」
やってきた友人二人は、私の嫌な記憶を一旦閉め、楽しさを運んできた。
また私だけになったら、嫌な記憶は顔を出してくるのだけれど、それでも、今は楽しい!という記憶を必死に焼き付けようとしている私がいた。
10/22/2023, 11:10:32 PM