kiliu yoa

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「ねぇ、あなた。もし、わたしの方があなたより早く あの世へ旅立つなら、

 笑顔を見送ってほしいの。すぐには、此方に来ちゃだめよ。わたしのいない

 余生を楽しんでね。

 それに、結婚しても良いのよ。わたしを気にせず、幸せな家庭も築いて良い

 のよ。」と、そんな何気ない、貴女の言葉が頭をよぎる。

 
「お願いだ……。妻を助けてくれ。」と、泣きながら私は、友人に縋り付き、

懇願する。

「最善は尽くす。しかし、命の保証は出来ない。」と、私とは対象的に友人は

極めて冷静に応える。

そこから、どのくらい経っただろう。

友人は、妻の寝室から出てきた。

「最善は尽くした。でも、此処からは彼女次第だ。」と、友人は言った。

「何で、そんなに冷静に居られるんだ!彼女とは、何年も前からの仲だろう!

 おまえには、心が無いのか!」と、私は激怒した。

 友人のひどく冷静な、全く動揺しない、まるで、見知らぬ人のように接する

 ような冷たさに。

 そしたら、予想外にも友人は感情を露わに言った。

「分からないとは、言わせない!生死の堺のときは、冷静で居る大切さを!

 今まで、わたしたちは何度も、人の死際に立ってきた!

 何度も処刑人として、命を殺めてきて、それか!いい加減にしろ!

 今まで、貴様は何を学んできたんだ!」

 と、私以上の激情で言って、いや、叱ってくれたのだ。

 そのおかげで、冷静になれた。

 幸い、あの後、妻は目を覚ました。

 今では、健康に日々を過ごせている。

 後日、友人に謝罪と礼を伝えに行った。

「気にするな。そういう時もある。お互い様だ。」

 と、友人は無愛想に言った。

 その友人の懐の深さが、格好良かった。



 

 

 

10/26/2023, 11:21:46 AM