酸素不足

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『終わりなき旅』


ずっと、探している。
あなたの欠片を――。

彼は、偉大な魔法使いだった。
他を寄せつけない強さと、花を愛でる優しさと、動物を愛する心を持った、唯一無二の存在だった。
親に捨てられた僕を拾ってくれたのも、全てのものに慈しみを持つ彼らしい行動だった。
彼と過ごす日々は、とても穏やかで、それはそれは素晴らしいものだった。
僕が、あの禁書を開かなければ、それは未だに続いていたことだろう。

僕を助ける為に、僕の代わりに呪いを受けた彼は、粉々に弾けて世界中に散らばってしまった。

その欠片を、一つ一つ探す旅をして、もう三十年になる。
彼の欠片は、まだ小さな袋に半分ほどしか集まっていない。

欠片がどのくらいあるのか、今どのくらい集まっているのか、全く検討もつかない。
欠片を全て集めたところで、彼が元通りになるのかも分からない。
けれど、この旅を続けることが、僕ができる唯一の償いだ。

たとえ、この身が朽ち果てようと、彼を復活させるまで、僕は旅を終わらせるつもりはない。

5/30/2024, 12:13:27 PM