椿灯夏

Open App

お題《元気かな》
 

鈴鳴桜の咲く季節に彼と出逢った

無愛想で

話しかけても無視 

致命的なほどに私は好かれてはいなかった


彼と淡いの杜で過ごしたあの日々


鈴狐のなずなからは女の敵扱いされ

鈴烏の依澄はよく相談にのってくれて

鈴鳴の杜で一番美味しい和菓子を分けてくれた


神隠しで永遠に世界を渡り歩く運命づけられ

落ち込む私を彼は


「仕方ないから付き合ってやる。おれの神名に誓って、お前を元の世界へ帰す方法を探してやる」


「行くな、と一言、いえたらいいんだがな。おれにはできない。お前だから。お前だからこそ、できないんだよ」


「幸せを祈ってる。いつでもお前を想っているよ。

――出逢えたのがお前でよかった」



もう二度と逢えなくとも


“あなた”を愛しています


――自分で壊した日常を再生するために


私は“あなた”と交わした約束を胸に手紙に綴る


毎年桜の咲く季節になると私は言の葉を織る



泡沫だけどその日はいつも桜吹雪が日常を淡く染める



さあ前へ進もう



あなたがくれた約束で日常に煌めきを灯そう



鈴鳴桜の澄んだ音色に耳を澄ませば


――ほら。あなたの歌が聴こえる


4/9/2025, 2:24:54 PM