足の踏み場もないほどの文庫本が床に散乱している。
読みかけでしおりが挟んであったり、購入したはいいものの結局読まれなかった可哀想な積読本たち。
持ち主をたらい回しにされ、挙げ句の果てには土のついたスニーカーで踏みつけにされる最期なんてあまりにも残酷だ。本は持ち主を選べないが、今度の購入者が私でなければ、もっとましな最期もあっただろうに。踏んだのは私ではないが、一端の責任を感じて気が重くなる。
額から垂れる血でぬるつく床にはいつくばり、適当に目についた本の見開きのページの文章を目で追う。「坊主憎けりゃ」……ああ、まさに今の彼の心境じゃないか。
5/18/2025, 3:34:33 PM