喜村

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 窓から夏の強い日差しが差し込んでいた。
カリカリと文字を書く音が教室に響いている。
 本日は期末テスト。
このテストがあれば、晴れて夏休み、となるのだ。
 だが俺は、そのみんなのペンを走らす音を聞きながら、その窓の外を眺めていた。
自分はペンをもたず、ただぼんやりと道路を眺めていた。

 全く解けない。
 全く分からない。
 こんなの習ったか?、と言いたい程に知らない問題ですねぇ。
 真っ白な答案用紙を見ていると、みんなのペンを走らす音だけでも、焦りがやばい。

 心だけ、逃避行させてください。
 ただぼんやりと、俺は外を見ていた。
 かげろうが立ち上っていた。


【心だけ、逃避行】

7/12/2025, 1:25:44 AM