『心と心』
土煙と瓦礫ばかりの荒野をとぼとぼと歩いて見知った人を探す。空にも届くかと思われたあの遥かに高い塔は雷鎚によって壊されてしまい、私たちの言葉もばらばらになってしまった。私の家族は、恋人はどうなってしまったのか。もし会えたとしても、ばらばらになった言葉ではなにも伝えられないし、なにもわからないのではないか。
不安のさなかに、うずくまる人を見つける。こちらに気づいたその人は驚きに目を見開くと私の名前を口にして立ち上がった。私も喜びをあらわにその人の名前を口にして駆け出す。私の恋人は胸に飛び込んだ私の体をしかと抱きとめてくれた。
彼が以前とは違う言葉を語りかけてくる。私の耳はそれを聞き取れないが、少し伸びた髭を触り、土煙でよごれた頬をぬぐい、目尻に浮かんだ彼の涙を見ればそんなのは些細なことだった。
12/13/2023, 3:19:32 AM