前回投稿分の翌日あたり。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこでは、いろんな世界から来た人間、獣人、竜、機械生命体、宇宙タコに幽霊等々、
ともかく、いろんなのが仕事をしておりまして、
皆みんな、それぞれの部署ごとに決められた科だの属だの目だのの、動物の名前をビジネスネームとして、貸与されておったのでした。
収蔵部のドワーフホトと、
経理部のスフィンクスは、
そろそろ4日でも5日でも、いっそ1週間くらい、
日程合わせて休暇をとって、旅行しようと画策中。
スフィンクスの居城たるコタツに入って、
ミカンをムキムキ、クッキーをシュクシュクしながら、パンフタブレットをスワイプするのです。
「観光エクササイズプロジェクト〜?」
「1日ひとつ、合計7個の星を訪問して、それぞれ固有の自然を巡るんだとさ」
「グルメ、スイーツぅ」
「無し」
「なんでぇ」
「エクササイズだからだろ? 行こうぜ」
パンフレットのタブレット板には、満月に照らされたピラミッドと黒いシルエット。
7個巡る観光地のうちの、ひとつを映しています。
それはとても壮大で、美しくて、
なによりこのピラミッドを、スフィンクスもドワーフホトも、知っているのです。
ただドワーフホト、美味しいものが大好きでして。
「ぐーるーめ!ぐーるーめぇ!」
「このピラミッドの中に入れるだけでも、十分いや十二分に申し込む価値あるぜ?」
「美味しいものがなきゃ、観光じゃないよぅ!」
グールメぇ!グールメぇ!
ドワーフホトがリズミカルに言います。
ドワーフホトがメェメェ連呼するものだから、自分を呼ばれておるのかと、メェメェ環境整備部の黒ヤギが確認に来たくらいです。
「ほら、ホト。想像してみろよ」
「ぐーるーめぇ」
「あの日見たピラミッド。頭上に満月。
ピラミッド、君を照らす月、ああ、嗚呼、満月に『この』ピラミッドといえば、あの」
「ごはんー」
「てことで予約しといた」
「グルメ旅行のパッケージにしよーよぉ。美味しいものゼロなんて、耐えられないよぉぉ……」
グールメぇ!グールメぇ!
やっぱりドワーフホトがリズミカルに嘆きます。
ドワーフホトのグルメグルメ連呼に反応したのか、スフィンクスの宝物、水晶のように美しいミカンの形の宝珠、水晶文旦が光り輝きます。
あんまり光るので、近くを通りかかった法務部のツバメが立ち止まるほどです。
「随分眩しいですねスフィンクス査問官」
「この旅行行こうってホトと言い合いしてた」
「ああ。例の」
メェメェ、ぐるめぐるめ。
ドワーフホトはやっぱり少しだけ不満。
タブレットの紹介映像だけが、申し訳程度のお題回収として、ピラミッドを照らす満月の映像を静かに映し出しています。
ああ、嗚呼、ピラミッド。君を照らす月の映像が、まさしく今回の、お題回収だったのです。
11/17/2025, 9:56:36 AM