せつか

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とある古城に一枚の大きな絵が掛かっている。
百号ほどの大きさのその絵は城の広間に掛かっていて、かつては賓客達を睥睨していたであろうことが窺える。
描かれているのは五人の人物だ。
いずれも上等な黒いスーツに身を包み、四人は椅子に座り、一人は立ってこちらを睨みつけている。
かつてこの城に住んでいた城主達であろうか。だとしたら一枚の絵に収まっているのはおかしい。
では、一人は城主で他は一族の者達なのだろうか。
それだとまたおかしな点がある。
この絵に描かれているのは、全員男性なのだ。
普通、こういった大きな絵に複数の人物が描かれていたら家族かと思う。だが、この絵の人物は全員男性で、しかもみな似ていない。つまり、赤の他人なのだ。
血縁関係では無いとしたら、組織か何かの幹部達だろうか。分からない。
この絵が古城に掛けられている理由も、描かれている老人達の正体も、誰が描いたのかも分からないこの絵は、黒いスーツに白髪の老人達という画題のせいでモノクロに見える。そして·····、酷く不吉な、禍々しい雰囲気を醸し出している。

〝この城が滅んだのはこの絵のせいだ〟

そんな都市伝説めいた話が巷間に流れるのも、無理からぬ話だった。

◆◆◆

『見つけたよ』
たった一言。
そのメッセージを見た瞬間、男は立ち上がった。
探し続けた唯一の手がかり。
悲願を成就する為の切り札。
「よくやった。すぐ行く」
相棒の手柄に逸る気持ちを抑えて支度をする。
「·····」
胸によぎる一抹の不安。
頭を振ってやり過ごす。

何があっても、どれだけ犠牲を払っても、今度こそ奴等を·····。

決意を胸に、男は旅立った。


END



「モノクロ」

9/29/2025, 3:13:48 PM