ささほ(小説の冒頭しか書けない病

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窓から見える景色

「窓から外を、いや、空を見せてやる」とあいつは言った。あたしは信じなかった。窓はある。つまらない路地や隣の家の壁が見えるような窓で、空は決して見えない。人類みんな地下で生きてるこのご時世にどうやって空を見せる気だ。でもあいつの自信ありげな笑顔に唆されてあたしはレジスタンスに入った。レジスタンス「地上の光」だよ笑っちまうネーミングセンスだな。

一部富裕層が半地下に暮らし太陽光にあたっているという噂は以前からあった。地上は放射性物質とダイオキシン類に汚染されているとされる。実際にどうなのかあたしは知らないが、野生動物もいくらかはいるらしいから地上に出たらすぐ死ぬというわけでもないらしい。とりあえず外に出たいぜ!というのが「地上の光」の基本理念で、レジスタンス活動はおおまかに地上の実態を探ることだ。

レジスタンスには実働隊と間諜部と生活部があって、実のところ一番人気は生活部なんだ。ほら下層民は人工太陽光も浴びられなくて薬飲むじゃん。赤ちゃんにもカプセルを支給する悪辣な政府だから下層民の赤ちゃんどんどんくる病になる。それをどう治すか予防するかが生活部の仕事。あれはあれでかっこいいんだが、あたし頭悪いからできない。あいつもわりとアホだからできない。

つまり頭悪いあたしとわりとアホなあいつは実動隊なのでともかく地上を目指す。間諜部が探しあててきた暗い裏階段を登りに登り、見上げるような高さにある横に細い窓から白い光が落ちているのを見た。「あれが太陽光だ」とあいつは言い、光に向かって踏み出し、そして、そこに仕掛けられていたレーザー光に貫かれて倒れた。

あたしはどうしたらいい? あいつは約束を守った…わけじゃないな、あいつは太陽光かもしれないものを見せてくれただけだ。あたしは進む。窓の外の景色を見るために。

9/25/2024, 11:00:29 AM