街の明かり…
…
目を閉じると きゅっと胸が苦しくなるような、切なく、泣いてしまいそうな、大事で、大好きな街の明かりがある。
新人の頃、本社が東京にあって各地方から研修のために大勢、集められた。
私は、飛行機が苦手だ。
空港に行くのも搭乗手続きも、飛び立つあの瞬間も、何もかも、未だに慣れない。
そんな私に、何故か新人研修以降も、勉強会だの様々な研修だのと本社に呼ばれては、苦手な飛行機にたった一人で乗ることが多かった。
そんな時、唯一の救いが小さな窓から見下ろして見た帰りの地元の街の明かり。
やっと…帰ってきたと思うと、本社での仕事の大変さより、無事に私の街に帰ってきたと思うと、一人感極まってしまうのだった。
どんな天気だろうと、あの時見下ろして眺めた星空のような明かりは、いつでも私の中で蘇る大切な明かり。
今まで、様々な街の明かりを旅先で…暮らした色々な街で見てきたけれど、どの明かりも全て、優しかった。
当たり前に暮らしていた時に、災害などで一斉に停電になったあの日、全てが闇に包まれた。
台風や地震などの自然の猛威に晒された時、当たり前の暮らしの大切さがしみる。
闇は怖いわけじゃない、闇は悪いものでもない、
闇だからこそ空の星の明るさが、より解ることを知る。
停電が復旧するまで、どれだけの人達がそこに向かって動いたのか、どれだけ迅速に立ち回ってくれたのか、私達には解らない。
でも、暗闇の中、ポツ…ポツ…と灯りが点きはじめたのを見て、私は走った。
あ…近づいてくる。
それは、まるで舞台の役者を後から順番に照らすような感覚の速さでパパパパパ…と電柱が灯る。
こんな瞬間を、産まれて初めて経験した!
明かりがゆっくり、あちこちでその場にいるスターを照らすように点いて行く。
闇から、日常へ戻った瞬間だった。
もう一度見たい気持ちと、もう二度とこんな心細い気持ちにはなりたくないなぁと思う気持ちが、未だに私の中で忘れられないでいる。
この電柱の光も、一軒、一軒のお宅の窓の光も、高層マンションやビルの光も、見下ろすと綺麗な夜景だ。
私は、見下ろす街の明かりも、近所の平べったい周りの明かりも どちらも大事で、大好きな街の明かりに違いない。
それは、これからもずーっと、変わらない。
私は欲張りだから、闇も好き。
でも、きゅっと胸が苦しくなるような泣きそうになる暖かさは、やっぱり明かりには勝てないんだな。
あなたは、どんな街の明かりに心奪われますか?
*読んで下さり ありがとうございます*
7/8/2023, 12:29:30 PM