ゆじび

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「I'm mess」


見つめられると思い出す。

幸せなあの頃を。


「七菜。」
「父さん。どうしたの?」
「今日の晩飯お好み焼きにするか」
「本当に?やった!」

私と父さんの2人暮らし。
裕福な暮らしじゃなくても幸せだった。
お好み焼きは我が家のご馳走で、お父さんの給料日にたまに食べる程度だった。

私は父さんに拾われたらしい。
お父さんがパチンコから帰ってきたとき、ゴミ捨て場に捨てられていたそうだ。
私の名前は縁起がよさそうだ。という意味でラッキーセブンからとった7。
大好きな名前。
七菜の「菜」は私がはじめて家で食べたものが野菜だったからだそうだ。

幸せだった。
幸せだった。
ご飯のない日もあって寒さに凍える日もあった。
けどいつも父さんがそばで私を暖めてくれたから。
私は愛を知れた。
大切にしたいと思えた。


ある日。
私は父さんと行きつけの安いスーパーでもやしを買った。今日のご飯はもやし炒め。焼肉のたれをかけて食べる。すごく美味しい。
私はレジで会計をしているお父さんの隣で立っていた。私は7歳。
すると窓が割れた。
バリッ。バリッ。
遠くを歩いている怪物だ。
怪物の歩みに合わせ建物全体が動いた。
怪物はこっちに近づいてくるようだ。
怪物はスーパーから100メートルもない場所にいる。
すると父さんが言った。
「―七菜。父さんな、もともと消防士さんだったんだ。怪我しちまって引退したけどな。」
「父さん。そんなことよりも怪物が―。」
「だから父さんな。人を救いたいんだ。
七菜。お前は生きろ。生きて生きて、人を愛して愛されるんだ。そしたらきっと愛に溺れて生きていける。」
「とう…さん」

そう言って父さんは走って出ていった。
声を張り上げ父さんは走った。怪物はそれを追いかけ山の方に消えていった。
「とう、さん?」
一人残された七菜は消え去りそうな声でそう言った。

その後政府の使者というものがスーパーに訪れた。
親のいなくなった子供。つまり私に愛を奪い返すための組織に入らないか?というものだった。
私は父さんが、愛が帰ってくるのなら。と思い、
ついていった。
本当は返ってこないって分かってたのに。

私は「愛奪還組」という組織に入った。
とは言っても私は訓練兵。
私は14歳まで訓練施設へ行く事になった。

訓練施設ではいろいろな子供がいた。
笑う子泣く子さまざまだった。
そのなかで私に最初に話しかけてきた
「愛桜」あいらちゃんという女の子がいた。
少し茶色かかった髪の毛を低い位置で二つにくくっている。私よりも一つ年上だった。

「七菜。よろしくね」
「愛桜さん。はい。」
「愛桜でいいよー」
「愛桜ちゃん?」
「へへ。いいねー」

可愛らしくて大好きな人だった、
私をずっと愛してくれた。
一緒に訓練をしたり、うどんを一緒に食べた。
都会に遊びにいけるような自由のない愛奪還組でも
笑える日が増えたと思う。

それから、六年が経った。
もう少しで愛桜ちゃんが愛奪還組の待機場に移動になり、戦場に立つ。
愛桜ちゃんは私に言った。
「七菜。私はね戦いにでても手紙とか遺書は残さないよ。だからこれから先、来年七菜が戦場に立つようになるまで言葉を伝えることはない。」
「そうなんですか。なんでなんです?」
「私は死なないからね。死ぬことの怖さだって感じないし。」
「愛桜ちゃん。また会いに行きますからね。」
「へへ。告白みたいね。―待ってる。
あっそうだ。渡したいものがあってね。」
「渡したいもの?」
「はいっ」
ゴーグルだった。
大きくて戦場に立つときに使うようなもの。
「七菜に似合うと思ったの。やっぱり黒い髪によく似合うっ。」
「ふふ。そうです?ありがとうございます。
絶対これつけて会いに行きますからね。」
「楽しみにしてるっ」

そう言って愛桜ちゃんは沢山の14歳を向かえた訓練兵たちと大きな扉を開き、歩いていった。

次の日私の元に届いたのは。
愛桜ちゃんのネックレスだった。
愛奪還組の兵たちは常に自身の特定に使うネックレスを身に付けている。
これは愛桜ちゃんのもの。
つまり愛桜ちゃんは死んだんだ。

私は泣いた。泣いた。
すると目を真っ赤に腫らした愛桜ちゃんと同い年の兵が一人、私の元に歩いてきた。
「愛桜は先日の初戦にて勇敢に立ち向かい散って行きました。」
嘘。愛桜ちゃんは臆病で勇敢に立ち向かう訳がない。
「愛桜は…あなた。七菜のことを沢山。話していました。可愛らしくて優秀な子だと。来年再会するのがとてもたのしみだと。」
これは本当。同じことを愛桜ちゃんにも言われた。
「愛桜から七菜に向けた手紙が届いております。」
私に手紙を差し出した。すると兵は礼をし目元をこすり元の居場所に帰っていった。
私は涙が止まらなかった。

手紙。愛桜ちゃんは手紙を残さないと言っていた。
なのに残して行ったのだ。
なにか、あったのだろうか。


七菜へ。
元気?私は多分死んでるのかな。
私が死んだら届けてって言ったからね。
七菜。手紙を残さないって言ったのに残してごめんね。怖くなっちゃったんだ。大好きな七菜に忘れら れるのが。だから手紙を書かせてね。
七菜。私はあなたが羨ましかった。
勇敢で強くて沢山の愛されて育ってきたんだなって
思ってたから。私は親に叩かれて育ってきたから怪物に親が殺されたときちょっと嬉しかった。
そんなのどうでもいっか。
七菜。七菜はいつも消えてしまいそうな雰囲気があった。だからあなたが強く生きられるようにあなたに
目標をつけさせて。
愛されること。今までで一番死にたくないと思った時に人生を終えること。自殺しろとかじゃなくて幸せになってから死んで。
愛されて、愛して、愛に溺れて死ぬこと。
分かった?
長くなってごめんね。
愛しているよ。大好きな七菜。

PS,あえなくてごめん


   あなたの愛桜ちゃんより         」



所々濡れたように丸いシミがついている。
これは愛桜ちゃんのもの?それとも私のもの?
わからない。わからないよぉ。
愛桜ちゃん。大好きな愛桜ちゃん。
おいていかないでよ。



それから3年がたった。
私にも後輩ができた。
私はもう戦場で2年間戦ってきた。
この二年で沢山の仲間が死んだ。
仲間が死ぬたびに私の後輩。「春来」は深く落ち込み、下を向いていた。
ある日春来が言った。
「七菜先輩はどうして笑えるんですか。」
その一言が私の胸に深く深く刺さった。
「私は強いからね。」
そう言いたかったが声が突っかかった。
好きで強くなった訳じゃないのに。
強くはない。
ただ強がっただけ。

笑ってやり過ごした。

目標だとか色々語ってしまった。けど、言いたかったのは結局「一人にしないでね」それだけだった。






「みんなに。いつか、あいにいくからね」

3/29/2026, 10:38:50 AM