ミヤ

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"なぜ泣くの?と聞かれたから"

昔の話を聞きたがったのは貴女の方だったのに。
その瞳からほとほとと零れ落ちる涙が不思議だった。
どうして泣くの?と聞くと、
君が泣かないからだ、と貴女は涙声で言った。

なに笑ってんだよぉ、と力無く頬を抓られて初めて、自分が笑っていることに気付いた。


別にね、辛くなんて無かったんだ。
本当に。
だって、それは当たり前のことだったから。
それでも、貴女が泣いてくれたことがなんだか嬉しかったんだ。

頬を緩くつまむ手を外させて、背中をポンポンと撫でると、泣き声が更に大きくなった。
透いた緑に編み込まれた柔らかな赤の音色が綺麗で。ずっと見ていたいな、と思った僕は、いつかの誰かに言われた通りやはりどこか壊れているんだろうか。
こんな人間に好かれた貴女は心底可哀想だと思う。
だけど、もう手遅れだ。
ぎゅっと抱き締めた手に力を込めて、
もう二度とこの手を離してあげられないなぁ、と苦笑した。

8/19/2025, 5:04:46 PM