白糸馨月

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お題『ルール』

「こらっ、また化粧して! しかもネイルまで……次の授業までに落としてきなさい!」
「えー、化粧くらいいーじゃん。授業にカンケーあるわけぇ?」
「関係なくても今からルールを守らないと、将来ロクな大人になれないわよ!」
「なにそれ、意味わかんない」
「意味わからなくてもいいからこっちきなさい! 化粧落とすわよ!」
「えー」

 クラスで騒がしいギャルたちが学年主任のおばさん先生に連れられて消えていく。私は普段から校則に則った服装をしている。ひとつ結びの黒い髪、眼鏡、ノーメイク、長いスカートに短い靴下。校則破ったら内申点下がるのにバカだなぁと遠目で見ながら思う。
 私が普段から校則を守るのは、教師に気に入られるためだ。より気に入られるために成績を良くしておくことも欠かさない。ちなみに眼鏡は、「賢そうに見えるからつけてる」だけのオプションだ。

 一日の授業をこなしてホームルームが終わった後、特に掃除当番でもなく、日直でもない時は誰よりも早く教室を出る。部活には入ってない。まわりのクラスメイトから、私は予備校に通うために早く帰ってるのだと思われてるらしい。
 だが、私は大学は推薦で入学する気満々だ。予備校には保険でしか通ってない。それに今日の行き先は別のところにある。
 私は、学校の最寄り駅から電車に乗り、しばらくして原宿で降りる。そこからトイレに入ると、眼鏡を外し、カツラを外し、ネクタイをゆるめ、スカートを短くする。頭につけたネットを外すと薄ピンクに染めたストレートヘアが解放される。それをブラシでといて、カバンから化粧ポーチを出して化粧する。ネイルをピンクに塗って

「よし、完璧!」

 と小声でひとりごちた。皆が知らないところでルールを破る私の行き先は、原宿のライブハウスで、今日は推しの地下アイドルが出るライブの日だ。推しのメンバーカラーはピンク。私は推しが好きそうな可愛い女子高生に扮して会いに行く。

4/25/2024, 3:48:06 AM