美佐野

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(未来)(二次創作)

 ジュピター灯台に火が入り、黄金の太陽現象が起きてしばらくして、世界は様相を大きく変えつつある。過渡期において人々の多くがそうであるように、不安に思い、少しでも先の未来を知りたいと感じる人間は後を絶たない。予知の能力を持つと言われたアステカの民の血を引くハモは、そうした人々の悩みを受け入れる側であった。
 今日もまた、多くの人々がハモの家の前に列を為している。三日に一度と制限を設けているが、その日は相談者目当ての露店も並んだりして、それなりにギアナ村の賑わいに貢献しているのも事実だった。
 相談の内容は他愛ないものだ。今いる家に残るか引っ越しをするか。旅行の予定があるので向こう一か月の天候を知りたい。恋する相手に振り向いてもらうためには。ハモはその一つ一つに丁寧に答えていく。そして少しだけ、予知の結果を添えるのだ。今日の相談者は10名ほどだが、最後尾に並んでいる人物を見て、あら、とハモは相好を崩した。
「ガルシア」
「お久しぶりです、ハモさま」
 何でも、近くまで寄ったのでハモに顔を出そうとしたところ、相談者と間違われ、列に並ぶように言われたのだとか。
「それにしても、すごいですね。ハモさまの予知の力が、こんなにたくさんの人を助けている」
「ふふ。そんな大したものでもないのよ」
 ハモは微笑む。未来は一つではない。ある時点での未来を予知することは出来るが、それはその人の行動一つでいかようにも変わるのだ。たとえば雨に降られると予知して、その日の外出を控えれば、その人は雨に濡れずに済むように。
「そうね、せっかくだし、お茶でもいかが?あなたの話も聞きたいわ」
「俺の話は、面白くないです」
「あら、面白いかどうかは私が決めるわ。あなたはただ、あなたが見て来た今のウェイアードについて、話してくれればいいの」
 ちょうど、二人目の相談者から珍しい茶葉を貰ったところだ。歩き出したハモに、ガルシアは静かについていった。

6/18/2024, 7:36:02 AM