「……何でついてくるの?」
「君が心配だからさ、ベイビー」
「その呼び方やめてくんない」
「ベイビー、やけに塩対応だね。ご機嫌ななめなのかい?」
「あんたがついてくる以上、ずっとご機嫌ななめよ」
「おっと……。それは困った、僕はどうすればいいんだろう」
「こっち来んなって言ってんの」
「それはできない相談だ」
「何でよ」
「僕には君を守る義務があるんだ。だから、君の行くところどにおいてもついていくよ」
「鬱陶しい、どっか行って」
「ノンノン、僕はどこにも行かないよ。君のそばを、離れるものか」
「もう! 擦り寄ってこないで!」
「そうやって牙を剥く君も、最高にキュートだよ」
「あんたって、相当クレイジーね」
「よく言われる」
「呆れた。もう勝手にしたら」
「ああ、勝手にするさ。で、どこに行く?」
「ご飯の時間なのよ。いつもくれる人がいるの」
「ああ、それは素晴らしい。僕もぜひ、ご相伴に与りたいね」
「少しだけよ。あたしのご飯なんだから」
「もちろんさ。君の邪魔など、しようとも思わないよ」
「……ふん」
とある午後、二匹の猫が連れ立って歩いている。つんと顎を上げて歩く子猫のあとを、心配そうに寄り添いながら、少し大きな猫が追う。
夕日に伸びた影は、しっぽが重なっているように見えた。
11/15/2023, 2:05:40 PM