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『ひなまつり』(創作)

 「雛飾り、買ったから送ったわよ。」
母が嬉しそうに声を弾ませながら言う。電話越しでも上機嫌な笑顔が見えるようだった。わたしはお礼を言いながら生後半年の赤ちゃんをあやしていた。可愛い可愛い愛娘である。母にとっては初孫であり、わたしの娘は誰からも愛されていた。

 翌日に届いた雛飾りは三段だった。わたしの居住空間を配慮してくれたらしいが、それにしても素晴らしく豪華な雛飾りだった。箔押しの家紋まで入っている。
「すごいの貰ったなぁ。こりゃ、ひなまつりの日に招待しなくちゃだぞ。」と、一緒に飾り付けていた主人が目をキラキラさせて言う。彼はお祝いやお祭りが大好きなのだ。
 そんなわけで、互いの両親を招待して娘の初のひな祭りをお祝いすることになった。誰もが笑顔で、心なしか雛飾りまで笑っているように見えた。

─25年後─
 「彼女、紹介するね。」
ひなまつりの夜、娘から彼女を紹介された。魂が惹かれ合うのに、性別は関係ない。
お雛様の隣がお内裏様である決まりはないのだ。

3/3/2024, 10:33:17 AM