柔らかい雨が降ってきた。わたしの好きな、激しく世界を打つ土砂降りには程遠い。
突然の雨だった。梅雨みたいにネチっこく、きみみたいに優しく降る。
地面が雨水の膜を張って、雨の優しさも靴底の弾力も受けとめていた。上の方では街灯が微睡んでいる。
わたしは傘を持っていないきみに、リュックの底から薄い折り畳み傘を差しだした。きみは鼻にかかったような声で、ありがと、と受け取り、二人の間で広げる。
はやりの音楽では、傘はいらないだの傘を捨ててだの歌っているが、確かにこの小さな傘ならあるもないもそう変わらない気がする。
肩幅の広いきみの左半身が、優しくて大きな雨に襲われていた。かく言うわたしも、制服のすそがじっとりと冷たくなっている。
それでもお互いの左手を繋いでまで傘に収まろうとするのは、やっぱり優しすぎる雨のせいなのだ。
題:手を繋いで
12/9/2024, 12:05:02 PM