今だけでいいから
全人類とりあえず死んでくれって思ったり、
1回だけでいいから
土下座しながら飛び降りたいって思ったり、
自分の目を引っぱたいて覚まさせたいくらい
寝ぼけた考えが浮かび続ける朝。
ポチッとボタンを押すだけで
部屋が一変し、
じゅうたんだった床は
木のフローリングに、
真っ白だった壁は
花柄になった。
全身鏡には落ち着いた服を着た
少女が映っていた。
外に出て少し歩くと村と店があり、
りんごカスタードパンを買って
また歩いた。
疲れてパンを食べて、
歩いて疲れて…。
そうして着いたのは港だった。
波は穏やかで
風も優しくて
夜まで桟橋に座っていた。
なぜあんなに歩いてここに来たのかと言うと、
月に1度だけ
この桟橋から
光る星屑クジラが見られることを知って、
こうして毎月見に来ている。
目の中が星屑で埋め尽くされるような
不思議で綺麗で
時間が止まったような体験ができる。
クジラも綺麗だが
クジラが映る海もまた綺麗で。
寒い中1目だけクジラを見て
ボタンを押そうとする。
あんまり見てると中毒性が高いから
目が腐ってしまうので
諦めてボタンを押す。
"Good Midnight!"
バイバイ。
私の大好きなセカイ。
目を開けると4時間経っていただけで、
まだ朝の8時だった。
この世界でも
上手く歩いて生きれたらなぁ。
頬を引っぱたいて
寝ぼけた考えを押し込んだ。
2/1/2025, 1:05:00 PM