NoName

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花咲いて、夜の帷に鳥呼ぶ。
君、白粉の顔に頬をつけたる。
悲しみの色、嫌ましに涙袋に溜まり、白露一筋落ちるのを、指ですくう。
涙が止まらないのを、恋のせいにするのは、浅はかだろうか。
君が私の名前を呼ぶのを、遠く鳥が啼いているかのように、背中に聞くのは、非常に億劫だ。
もっと、近くで泣いて欲しい。
この手の届く距離で君を抱きしめたい。
慰めはいらないだろうか。
玉座に君を招いても、君の声を聞いても、私の気休めにはならないのだ。
今、この場所で、手と手を重ねて、朝啼き鳥の声を聞くまで共にいたいのだ。
君の言葉で、どうか囁いておくれ。
その、悲しみを。

7/23/2023, 10:12:53 AM