猫(筆に随ふ)

Open App

 自分の幸福のラインを下げることによってより多くの幸福を得ようと試みるといった話には反対である。色々のことに幸福を感ずること自体はとても良いことだと思う。けれども、至らない幸福の、至ることのなかなか叶わない幸福を前にして、それに目を向けるのを諦め、それを求めるのを諦め、より身近で、簡単に得ることのできるものによって自己を満足させて納得させるというのが続けば、いずれきっと、精神が疲れてしまう。醜悪の部分があるのが人間であるというのは間違いない。が、醜悪は醜悪であって、それは美ではない。醜悪に理屈を付けて美と解するのには無理がある。醜悪を美と勘違いしてはならない。私は生きることとは、なんとかして、ときに涙を流しながら、醜悪を避け、退け、そして前に進み、真善美と言われるものをひたすらに追い求め続けることだと思う。

3/28/2025, 10:24:47 AM