変わらない。ここは何も。
十年前と同じ景色を、今日も見ている。
古びた回転木馬。
軋む観覧車。
ひび割れた道。
子どもたちの笑い声。
冬晴れの空を見上げる。
澄み切って雲一つ無いそこを、小さな飛行機が横切った。
ここでは時の流れがひどく遅く感じる。
赤と白のストライプのひさしが見えた。
その下に、クレープのサンプルが一面に陳列されたショーウィンドウ。
小銭を握りしめて列に並んだことを思い出しながら、クリームたっぷりのクレープを買った。
あの日夢中になった味だ。
美味しいことに変わりはなくて、けれど記憶の中よりも甘い。
変わったのは自分か。
昔の流行りの歌を、いまだに流すスピーカー。
色褪せた楽しげな看板。
ゴーカートの排気ガスの匂い。
沈む夕日。
何度も通った遊園地。
思い出たちが染み込んだ景色は、どこか物悲しい。
もう帰るよ、と誰かの母親の声がした。
1/5/2024, 2:01:16 PM