「地獄だ」
荒野を前に男はひとり、呟いた。
いつ歩きはじめたのか、なぜ歩いているのかすら覚えてない。
彼の記憶にあるのは、空から降り注ぐ光の景色だけだった。
疲労が限界だったのか、ばたりと彼は倒れ込む、目をひらき、空を仰いでも、映るのはどんよりした雲だけだ。
「神様、お願いですから、私を助けてください」
縋るよう、捻り出した言葉に、誰かが気付いた。
男はいつの間に、知らない場所にいた。
見渡すと、すぐそこに雲が浮かび、空には星々が煌めいていた。
天国のようだ、と男は思った。
しばらく後、天使に会った彼はこう尋ねた。
「神が私を助けてくれたのですか?」
天使はすぐに答えました。
「神が居ないので、私が代わりに回収しているのです」
1/31/2023, 1:38:50 PM