ㅤ教師の呼名に、君は力強く返事した。
ㅤ同じ制服を着て同じように壇上を歩くのに、君だけが私の目にこんなにも輝いて見えるのは何故だろうね。
ㅤ以上。本年度卒業生、三百五十六名。
ㅤ全員が自席に戻り、一斉に着席する間際、君が私の方をチラリと振り向き、小さく手を振った。悪戯を共有する仲間の顔で私も微かに振り返す。
ㅤ癖で髪を耳にかけようとして、指先が空を切る。今日までと思って伸ばしていたはずの髪。
ㅤ忘れないよ。君が私を親にしてくれたこと。喧嘩して笑って泣いて、ここまで君と歩いた道は決して消えることはないから。
ㅤその時がいつになるか私には分からないけど、明日から嘘を突き通せる勇気を、どうか神様私に下さいね。
『君と歩いた道』
6/9/2025, 9:23:55 AM