「不完全な僕」
人間は、完璧な存在と言えるのだろうか。
嬉しいことには喜んで。
嫌なことには怒って。
哀しいことには泣いて。
楽しいことには笑って。
そんな存在を、完璧と言っていいのだろうか。
動物たちは、生を食んで生きている。
じゃあ、人間はどうなのだろう。
ふと、そんなことを思った。
なにもない、白い部屋で、頭が可動していた。
ごろん、と床に転がる。天井の電気が眩しい。
目を瞑る。なにかが思い浮かぶわけでもない。なにかが分かるわけでもない。
ただ、ぐるぐると、先の問いが頭をめぐっていた。
人間だって、動物を食べている。
動物を狩って、焼いて、食べる。
植物も採って、加工して、食べる。
だが、それは自然的に起こる話ではない。
「社会」という枠組みのなかで、「食べる」という行動をしているものだ。
動物の、必死に死にたくないから食べるというものとはかけ離れている。
その証拠に、人間は「食べる」こと以外にも、動物を殺し、絶滅させた。
そんな、死に追いやって生きている人間を、完璧な動物だと言えるのだろうか。
目を開ける。無機質な天井が広がっている。
重い体を起き上がらせ、ベッドの縁に座る。
こういうとき、君はどんな回答をするんだろうな。
『人間は動物。じゃあ、それは不完全だね』
急に、君の言葉が思い浮かんだ。
『動物は不完全。人間も不完全。それこそが、完璧なことなんだ。』
あのときはどういうことか分からなかった。
動物が、人間が不完全だ。そういうならば、それは不完全なんじゃないか。
『生を食べるということは、生態系を繋げていくこと。大切なこと。』
でも、人間は、不必要な贅沢に殺生をしているじゃないか。
じゃあ人間は、動物じゃない。そうだろう?
『その不完全さを埋め合うのが、動物。それが自然で、最も完璧に近いこと。』
人間は不完全だから良いんだ。そう、君は言いきった。
確かに、君の言うことは正しいのだろう。
社会でも、得意不得意を埋め合いながら、業務を行う世においても。
群れをつくり、そこでポジションを決める動物においても。
でも、僕は今でも不完全なままだ。
補填する、君がいないから。
不完全さを埋めてくれるパートナーが、いないから。
だからこそ、君の言うことは、僕のなかで否定で終わってしまっている。
埋め合える相手がいなかったら、それは完璧じゃない。
『別に完璧でなくてもいいんだ』
そんなの分かっているけれど。
だけど。
君に、僕の不完全を埋めてほしい。
それだけなんだろうな。
動物たちは、生を食んで生きている。
動物は、不完全であり、そこを埋め合って暮らしている。
それこそ、完璧で。完全で。
だからこそ、不完全なのだ。
9/1/2023, 4:18:01 AM