300字小説
祝いの影
しばらく連絡が途絶えた後、二人に呼び出されたファミレスで『実は結婚するんだ』と打ち明けられたとき『ああ、その時が来たんだな』と思った。
小学校からの仲良し三人組の三人目だった私が弾き出される時がきたんだと。
もちろん、どちらかの事を恋愛的に好きだったわけではない。二人の恋が愛に変わるのを応援していたし。ただ、あの三人でいる居心地のいい空間から転げ落ちるのが悲しかっただけ。
頼まれた結婚式での友人代表スピーチの原稿を前にペンを握る。三人での思い出が走馬灯のように頭の中を駆け巡る。
どこにも書けない悲しさを胸の奥にしまい込み、私は机の上の三人で撮った写真の写真立てをふせ、二人への祝福のメッセージを綴った。
お題「どこにも書けないこと」
2/7/2024, 11:16:58 AM