何千何万と課金した旅路の果てに推しゲーがサ終。
同じ間違いを2回か3回ほど、繰り返したことのある物書きです。
「旅路の果てに」というお題で今回もひとつ、物語をご紹介します。
最近最近、都内某所のおはなしです。
都内にしては深めの森の中に、本物の稲荷狐一家が住まう稲荷神社がありまして、
そのうち末っ子の子狐は、美味しいものが大好き!
その日も参拝者さんが持ってきたジビエジャーキーを、カミカミ、ちゃむちゃむ。
神社の庭の落ち葉の絨毯で、かじっておりました。
「おいしい。おいしい」
ちゃむちゃむ、ちゃむちゃむ。
イノシシ肉ジャーキーに牙を突き立てる子狐です。
噛み応え良く、味もなかなか良好。
時々ぶんぶんジャーキーを振り回すのは、きっと稲荷子狐の、狐としての本能なのでしょう。
ところで稲荷子狐の耳に、別の参拝客の足音と、
それから何やら話し声が聞こえてきました。
「一応、エビデンスが無いワケでもないんだ」
エビデンス。えびでんす。
コンコン子狐は狐だし、なにより子供なので、
Evidenceなんて英単語、よく分かりません。
海老を何か、田楽でも、桜でんぶでも、
デンのつく何かと一緒に料理した食べ物を、
ポワポワぽんぽん、想像したのでした。
なお伝助穴子なるニョロニョロもあるそうです。
アナゴかぁ。かばやき、いいなぁ。
子狐は連想に連想をかさね、更に連想を加速して、
連想の旅路の果てに「エビデンス」を、
海老を食べた伝助穴子の料理と断定しました。
「えび!あなご!えびでんす!」
旅路の果てに辿り着いた海老伝助穴子を、
コンコン子狐、どうしても食べたくなりまして、
とてててて、ちてててて!
ダッシュで参道を駆け下ります。
稲荷神社に至る神社通りに、それっぽいものを扱っていそうな店があるのです。
「おじちゃん!エビデンス、ください!」
くぅくくく、くわぅ!
子狐が爆速で突入したのは、大古蛇のお酒屋さん。
お酒の他に少しだけ、おつまみも売っています。
「エビデンス、えびでんす!でんすけあなご!」
ギャッギャ!ぎゃっぎゃ!くわぅ!
尻尾を高速ブンブンさせ、大古蛇のお酒屋さんに、
お金ならあると小ちゃなガマぐち財布を、
ぴゃっ!子狐は突き出しました。
「んんー……、 なんだって?」
イチバン困ったのがお酒屋さんの店員さんです。
「えび!えび!エビデンス!」
「エビデンス。うん。Evidenceか」
「たべたい!きっと、おいしい!」
「うーん。 なるほど?」
「おじちゃん、エビデンス、ください」
「エビデンスは食べられないよ」
「だまされない。おとなの食べ物だから、『こどもは食べられない』って言うんだ」
「んんー……。なるほどそう来るか」
これは困った。大古蛇お酒屋さん、悩みます。
考えろ、考えろ。お館様ならどうするだろう。
●●●●年で日本全国の酒を飲んだ店長を、思考の旅に登場させます。
「そうだなぁ」
思考の旅路の果てに、店員さん、言いました。
「このお店に有るおつまみで、作ってみよう」
意外とエビとアナゴ、
加工方法や味付けによっては
美味しいおつまみに化ける可能性が
まったく無いワケでも、無いかもしれない、かもしれないかもしれないのです。
(でもアナゴは蒲焼きで食いたいし
エビは天ぷら、別々で食いたいけどなぁ)
まぁまぁ、そこは気にしてはならぬのです。
「えびでんす!えびでんす!」
「うん、そうだね。エビ伝助だね」
コンコン子狐の思い込みと、
酒屋の店員さんの思考の旅路の果てに、
伝助穴子の干物を1パック、それから大小様々な種類のエビの、干物や小鉢パックシリーズを5個。
少しのお味噌やお塩、チーズも実験に参加させて、
まさかの数時間後、大古蛇のお酒屋さんに、
ひとつ、新作おつまみが爆誕しましたとさ。
「ぇえ……ウソだろ……」
「えびでんすあんまりおいしくない」
「だろうね。オコチャマの下には、そうだね……」
2/1/2026, 5:15:21 AM