ツユクサ

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お題『ベルの音』

私は昔、クリスマスの日の朝は、起きてから一番最初に会う父と母に「おはようございます」と挨拶をしたら、直ぐにクリスマスツリーの下を確認していた。そこには、確かに前から言っていた欲しい玩具がそこにいた。狂喜乱舞…と言っても差し支えないほどに喜んだ。

正直、父と母から贈られても嬉しいが、サンタさんの方が余程嬉しかった。

欲しいものが絶対に手に入るというのも嬉しかったが、本当のところ、実際に会ったこともないような人が、自分が望むプレゼントをくれる、という不思議さが面白かった。
そして、大人たちは皆その存在を知っていて、彼らにだけは聞こえる音や気配があることも、また面白いと思っていたのだ。

よく音の響く廊下を、物凄い足音を立てながら走り、祖父母に「ねえ、サンタさんが来た音、した!?」と扉を開けつつ聞く。
すると、花が咲くようなとびきりの笑顔で「うん。」と頷く。私が「本当!!」と跳ね上がるほど喜べば、「シャンシャン、って音がしたよ」と更に言及してくれる。

てっきり、当時の私は、サンタさんの来た音が聞こえたから、祖父母はこんなに嬉しそうなのだ、と思っていた。

今となっては、私に向けられた、愛おしさや微笑ましさだったのだと理解出来る。子どもらしくて可愛い、と言われるが、当の私からすればちょっと恥ずかしい話である。

そろそろ、私はベルの音が聞こえるような年齢だ。
サンタクロースさんを労うために、当日は、クッキーとミルクを持って、会いに行こうと思う。

12/20/2024, 2:09:08 PM